高齢化社会が進む中で、「将来を見据えて家をバリアフリー化したい」「親の介護に備えたい」と考える方が増えています。特に木造住宅では、築年数が経っていることも多く、段差や狭い通路など、バリアフリー化に適していない間取りが多く見られます。
この記事では、10年以上リフォームの現場に携わってきた筆者が、木造住宅の段差解消を中心としたバリアフリー化リフォームの実態、具体的な事例、そして費用や注意点について詳しく解説します。
■ なぜバリアフリー化が必要なのか?
高齢者や身体に不安のある方にとって、家の中の小さな段差や狭い出入り口は大きな障害になります。バリアフリー化によって得られるメリットは以下のとおりです。
- 転倒やケガのリスク軽減
- 室内の移動が楽になることで生活の自立度が向上
- 介助者の負担軽減
- 住宅の資産価値の維持・向上
厚生労働省の統計でも、高齢者の家庭内事故の約80%は転倒・転落が原因とされており、住宅のバリアフリー化は命を守るリフォームともいえます。
■ 木造住宅特有の課題
木造住宅では、以下のような課題があります。
- 床の段差が部屋ごとに違う
- 狭くて曲がりくねった廊下
- 建具が引き戸ではなく開き戸
- 手すりや補強材が取り付けにくい壁構造
これらを踏まえた上で、どこをどのように改修すべきか、家全体の動線を見直しながらリフォーム計画を立てることが重要です。
■ 主なバリアフリーリフォームの内容
- 床の段差解消
- スロープ設置、フラット床への変更
- 異なる床の高さを均一にする「床上げ」や「床下げ」工事
- 廊下・出入り口の拡張
- 車椅子でも通れるよう、幅を80cm以上に
- 扉を開き戸から引き戸へ変更することで開閉しやすく
- トイレ・浴室の改修
- 出入り口の段差撤去、手すりの設置
- 浴室のユニットバス化、滑りにくい床材への変更
- 手すり設置・壁補強
- 階段、廊下、トイレ、玄関に手すりを設置
- 将来的なリフト設置に備えて壁内に下地を入れることも
- 照明とスイッチの改善
- 夜間の安全確保のために人感センサー照明や足元灯を導入
- 高齢者が届きやすい位置にスイッチを再配置
■ バリアフリーリフォームの費用相場
工事内容 | 費用目安 |
---|---|
段差解消(1か所) | 3万〜10万円 |
廊下拡張工事(1箇所) | 15万〜30万円 |
引き戸への交換 | 5万〜15万円/1ヶ所 |
トイレ改修 | 20万〜40万円 |
浴室改修 | 50万〜100万円 |
手すり取り付け(1本) | 1万〜3万円 |
全体をバリアフリー化する場合、100万〜300万円程度が目安ですが、介護保険や自治体の補助金を活用すれば実費負担を大きく減らせます。
■ 事例紹介:段差解消を含む全体バリアフリー化
【事例①】東京都・築35年木造一戸建て(2階建)
- 依頼主:70代夫婦、今後の介護に備えて全体をリフォーム
- 工事内容:
- 玄関・廊下・トイレ・浴室の段差解消
- 手すりの設置(合計7カ所)
- 開き戸を引き戸に変更(4カ所)
- 玄関スロープ新設
- 階段に滑り止め・照明追加
- 費用:約240万円
- 補助金活用:介護保険・自治体助成で約70万円補助
- 工期:約15日間
担当者コメント:
特に玄関とトイレの段差が大きく、つまずきやすい構造でした。引き戸化によりドアの開閉も楽になり、ご夫婦から「これで安心して暮らせる」と感謝の言葉をいただきました。
【事例②】兵庫県・築28年木造平屋
- 依頼主:60代男性、車椅子生活に備えての改修
- 工事内容:
- 全面フラット化(LDK・廊下・寝室)
- トイレ・浴室のバリアフリー化
- 廊下の拡張(70cm→85cm)
- スロープ設置(玄関・勝手口)
- 費用:約310万円
- 補助金活用:介護保険(20万円)、住宅改修助成(50万円)
- 工期:約20日間
担当者コメント:
車椅子での移動を想定し、フラットな導線と転倒しにくい素材を選定しました。施工後、施主様はご自宅内の移動がスムーズになり、自立生活が可能になったとのことです。
■ 補助金制度の活用方法
バリアフリーリフォームは公的な支援制度を活用することで、自己負担を抑えることが可能です。
- 介護保険による住宅改修(上限20万円)
- 要介護・要支援の認定を受けている方が対象
- 工事費の9割(最大18万円)まで補助
- 自治体独自のバリアフリー助成制度
- 所得制限や対象条件あり
- 市区町村のホームページで確認を
- 所得税控除(バリアフリー改修促進税制)
- 最大20万円の税額控除が受けられる制度
■ 施工のポイントと注意点
- 構造確認を怠らないこと:古い木造住宅では、壁の中や床下の状態が不明なことも。施工前にしっかりと点検・計測を。
- 家族構成と将来設計を意識:一時的な対策ではなく、10〜20年後を見据えた設計が重要。
- 信頼できる業者の選定:経験と実績のある業者を選び、必ず複数社から見積もりを。
■ 一括見積もりサービスで納得の業者探しを
段差解消などのバリアフリーリフォームは、見積もり内容や提案内容に差が出やすい工事のひとつです。そのため、複数業者に同時に見積もりを依頼できる一括見積もりサービスの活用がとても有効です。
筆者の現場経験でも、**「比較して初めて見えた価格差」や「プラン内容の丁寧さで決めた」**といった声を多数聞きました。
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まとめ
木造住宅のバリアフリー化は、単なるリフォームではなく「暮らしの安心・安全を守る」ための投資です。小さな段差でも、高齢者や身体の不自由な方にとっては大きな障害になります。
ご家族やご自身の将来に備え、今のうちから計画的なバリアフリー化を進めてみてはいかがでしょうか?
プロのアドバイスを受けながら、納得のリフォームを行うためにも、一括見積もりサービスの活用をおすすめします。
暮らしやすい家づくりの第一歩として、この記事がお役に立てば幸いです。